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源氏物語「行幸」 ~晴れの日の色~

「行幸」のあらすじ―――冷泉帝の大原野の行幸の折、見物していた玉鬘は冷泉帝の美しさに惹かれた。光源氏は玉鬘を尚侍としての入内を進め、その前に玉鬘の裳着の儀式を挙げようと玉鬘の実の父である内大臣に腰結の役を依頼し、親子の対面が実現したーーー現在の京都市西京区に大原野神社があるが、紫式部はこの神社を氏神と崇め、大原野の地を愛していたという。この近隣の野で行われる冷泉帝主催の鷹狩りのために、冷泉帝始め錚々...

源氏物語「野分」 ~時にあひたる色~

「野分」のあらすじ―――八月、激しい野分(台風)が猛威をふるった。光源氏の長男である夕霧は、台風見舞いのために父の名代として六条院の女君たちのもとを訪れる。その時に夕霧が見た女君たちの様子が見事に描かれているーーー近年、日本では台風などの大雨の被害に見舞われているが、千年前の王朝時代にも台風は発生し、被害をもたらした。天気予報のなかった時代、人々の恐怖はただ事ではなかったと思う。空の色が変わり、風で花...

源氏物語「篝火」 ~オレンジの光~

「篝火」のあらすじ―――前帖で宮仕えに出た近江の君の素行は、世間の噂の種に上っていた。光源氏の慎重な計らいによって、深窓となる六条の院に養われた玉鬘とは雲泥の差となっていた。初秋の一夜、西の玉鬘の庭前に篝火を焚き、光源氏は夕霧や柏木らと笛や琴を奏でた。ーーー「篝火」の帖は短く、場面設定が初秋の夜ということもあり、色彩表現は見られない。ならば、タイトルとなる「篝火」について。(篝火はこの時代の屋外照明。...

源氏物語「常夏」 ~テーマカラーは撫子~

「常夏」のあらすじ―――夏の夕暮れ、光源氏は内大臣家の君達を連れ、玉鬘のいる西の対へ行く。西の対の庭には美しい撫子の花が咲き乱れるが、君達は玉鬘に見立てられた撫子の花を思うようにできない。一方、内大臣は妾腹の娘である近江の君を探し出し引き取るが、行儀の悪い娘に手を焼き弘徽殿の女御のもとへ女房として出仕させるーーーこの帖に表れる色彩語は「つらつき赤める」「青き色紙」「いと赤らかに」の三か所。これだけな...

源氏物語「蛍」 ~ほの明りの美学~

「蛍」のあらすじ―――光源氏は娘として引き取った玉鬘を口説きつつ、一方で弟である兵部卿の宮に玉鬘との交際を勧め、二人を夕闇で引き合わせようと蛍を放つ。蛍の光に浮かび上がる玉鬘の美しい姿に兵部卿の宮は心奪われる。玉鬘に言い寄る光源氏と、玉鬘に心を寄せる人々のやり取りがつづられるーーー源氏物語にはたくさんの名場面があるが、夕闇に覆われていた室内に光源氏がたくさんの蛍を放ち、ぱっと光り明るくなる様子は名場...